製法から何まで真似しているわけだから、日清がサンヨーを訴えたように、東洋水産もパクリ組を訴えればいいじゃないかと思うかもしれないが、それはできなかった。
当時の社長・森和夫がいくらまわりにいわれても、意匠登録もインスタント油揚げの特許申請を行わなかった。
「退職金が高過ぎる」といって7分の1しかもらわなかった逸話が残るように、この人はセコくなかった。
●“盛られた”日清の美談
森氏のことは一般的にはあまり知られていないが、同じようなことをしたとして今でも神様のようにあがめたてられている人がいる。
日清創業者の安藤百福だ。諸説あるが、「インスタントラーメン」というものを世界で初めて発明したとされ、
いちはやく「チキンラーメン」の製法の特許を所得した。だから他社が真似をしたら片っ端から警告書を出した。
その数は113社にものぼったという。そんな状況だから当然、劣悪な商品も多い。これでは共倒れだということで、特許の抱え込みを断念した。
この安藤百福の「経営判断」は、時が流れて“やや盛った美談”に書きかえられている。例えば、
横浜みなとみらいにある「カップヌードルミュージアム」では、創業者・安藤百福の像なんかも飾ってあって、「百福シアター」では、訪れた子どもたちにこんな話が語られる。
安藤百福は、「企業は野中の一本杉であるより、森として発展するほうがいい」という考えのもと、
自らの利益のみを顧みることなく、インスタントラーメンの製法特許を独占せず、広く使用を許諾しました。
言っていることとやっていることが、ここまで違う会社も珍しい。
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